> このモデルでは、一つ一つの世界を一台のコンピュータに見立てます。正確には、そのコンピュータに搭載されたメモリ上に。 > そのメモリには、三種類の領域を設定します。 > まず一つはOSの中心のカーネル領域。世界の法則(熱力学や万有引力など)を定めたプログラム。不可侵で変更は一切されない(普通は)。 > もう一つは、変化あるデータの格納領域。植物や動物や星などのデータが格納されている場所。我々が認識する世界とは、この部分。 > 残る一つは、例外領域。後述するエラー対処のための領域。 > > さて、世界はプログラムのもと、変化はあってもすべてはプログラムの範疇の中でコントロールされてきました。念のため7つの世界があり、ときどき同期を取って安定を保ってきました。 > あるとき、ここに一種類の厄介なアプリケーションが搭載されました。 > その名は、人類。 > これがなぜ厄介かというと、OSにとってはバグを含んだアプリケーションだからです(笑)。それは意志を持った存在、このモデルをコンピュータに例えるならAI、いかなる挙動をするか完全には補足できない。それは瞬く間に世界の中に数を増やしていきました。 > ……が、さすがに人類出現の瞬間に落ちるほど世界のOSはやわではありませんでした。ちゃんとエラーをチェックして修正する機構が搭載されていたのです。人類というアプリケーションが想定外挙動を起こしてエラーを吐いたりメモリリークを冒しても、大規模な問題になる前に修正する機構が。 > あるとき、人類の中に一つの存在が出現しました。ここでは仮に速水と呼びましょう。速水は、厄介なことに毎回のように世界にとってのエラーを吐くAIでした。幻獣を倒すという目的をひたすらにやり続ける。世界は、何とかしてそのエラーを修正しようとします。しかし、速水はOSの動きを微妙に上回り続けました。やがて、速水以外のAIに変化が起きます。世界が修正する前の速水の吐いたエラーデータを察知し、それを真と判断します。世界の修正機構は鈍り、その間にただ一つの目的に突っ走る速水はどんどんエラーデータを吐き続けます。その分それを真と判断する他のAIは増えていき、その分世界は鈍り、その隙に速水はまた新たなエラーを……この相乗効果。やがて速水は、膨れ上がったエラーデータのもと人類というアプリケーションの規格を越えます。これを、人は人外の伝説とか人類の規格外と呼びました。 > さて、この速水とは世界にとっていかなる存在でしょうか。いやーなバグを吐き続けるはた迷惑なアプリケーション以外の何物でもありません。そのバグが速水のデータ内だけならまだしも、それは他のAIにまで影響を及ぼします。これが続けば速水のような規格外のAIは増えていき、やがてカーネル領域を侵すような事態になるかもしれません。 > そこで、世界は速水というアプリケーションのデータをごっそり、あらかじめ用意しておいた例外領域に退避させます。そこは、決して世界のデータやアプリケーションに影響を及ぼさないところ。伝説が住まう場所。データがごっそり移動したため、速水のデータは残された人々の記憶や歴史の中から急速に忘れ去られていきます。とはいえ、完全にとはいきません。すべてを取り去ってしまえば、かえって致命的なエラーを引き起こす可能性がありましたから。 > さて、速水というアプリケーションはこのままでよいのでしょうか? よくはありません。それこそとんでもない想定外挙動を引き起こしてメモリ全体を侵食するような可能性だってあります。 > 伝説には二種類ありました。よきゆめとなった者はプラスのデータの塊、あしきゆめとなった者はマイナスのデータの塊。プラスとマイナスです。足せば相殺されます。そして、速水のような伝説はいろんなところで出現してきます。 > よきゆめとあしきゆめの戦いとは、こうして起こったのです。 > しかし、例外領域内に隔離するのももはや危険なAIというものがありました。よきゆめでなら人類決戦存在HERO、あしきゆめなら幻獣の決戦存在『竜』と呼ばれるような者たちです。これらは巨大なバグとして、世界に致命的な打撃を与えかねない存在でした。 > 世界の防衛機構は、彼らを自分のところから追い出します。それから後は? 考えられ得る方法は二種類。一つは、そのまま他の世界に送ってしまうことです。自分のところとは違うOSの下でなら、なんとか処理できる可能性があります。もう一つは、データをばらばらにして分散させてしまうことです。このときは7つの世界で決戦存在と呼ばれる者が同時に出現したように見えます。ですが、ばらけたことで世界が何とか処理できる状態にまで落とすことができるかもしれません。 > それでも、どうしようもなく致命的なエラーが、それこそカーネル領域を侵されるようなことがあれば……世界の防衛機構は外部との繋がりを切断するのでしょう。他の世界も自分を守るため一つの世界を見捨てるのでしょう。その世界は同期を離れて、我が道を行くことになるのでしょう。 > > 一つ、お話を変えましょう。 > 人が伝説に変わるときに吐くエラー。人は、これを『願い』『祈り』『想念』などと呼びます。世界に、一時的にほんの少しだけ影響を与え、普通はすぐに元に戻ってしまう力。 > あるとき、ののみという少女がいました。彼女の前には二つの決戦存在、HEROと竜が対峙していました。二つの巨大なバグは、常軌を逸した変化を周囲に引き起こしていました。世界に存在するエラーデータの数々が集まってくるのです。二つの存在は、これを武器にして戦うのです。これを、人は万物の精霊やリューンと呼びます。 > ののみの目の前で、衝撃的なあることが起こりました。 > のぞみは、願います。二つのことを。HEROに○○○○れと命じ、竜となった○○ちゃんを助けろと。他のどの人物も言えなかった、○○ちゃんを助けろと、はっきり。 > 願いとは、微弱なエラーです。普段なら、世界の修正機構はそれを弾いてしまいます。しかし、このときのぞみの周りには多量のリューンが渦巻いていたのです。のぞみの叫びに、彼女の友達も願いました。ほんのささいな願いは、ただこの瞬間この機会をもって世界の修正機構を突き抜けます。それを、誰が予測し得たのでしょうか? ……いたのでしょう。本当に予測してしまった人物が。 > ののみの父親代わりだった者は言いました。『しんらい』が大切であると。むかしでもいまでもないどこかをしんらいせよと。たった一つの言葉が、やがて世界を覆すエラーとなる。 > 舞の父親代わりだった者は娘にこう教えました。隠れて努力せよと。それは、こうは考えられませんか? 他の人には、その人が一瞬にして変わったように見えること。本当はごくごく世界の当たり前な法則のもとで当たり前に導かれた結果を、その人は特別であると思いこんでしまうこと。エラーデータを真と信じさせること。 > アリアンと名乗る自称ハッカーがいました。彼は、HEROのために彼(女)と彼(女)の機体のデータを書き換えました。そのとき、世界は一度エラーと認識しました。そのデータは違うはずだ。訂正する……訂正された後のデータは、前より数値が増えていました。アリアンは、世界の法則、プログラムの何たるかをよく研究していたのではないでしょうか。だから、効率的にどういうエラーデータなら世界の修正機構をどう騙して望んだ結果が生まれるか、知っていたのではないでしょうか。彼がただの人間であっても、世界を騙す知識は、そのために取るべき行動は、ごく当たり前の人間というバグを含んだアプリケーションが持てる力なのではないでしょうか。 > > 世界の選択なのです。 > 人というAIがあるエラーデータを選択すること。 > 世界というプログラムがあるエラーデータを真だと選択する(してしまう)こと。 > そうは考えられないでしょうか? > > ……以上、長くなりましたが、「世界をコンピュータモデル」として考えてみたところ思いついてしまったので書き込みいたしました。 > 適当に突っ込んでやってください(自爆)。
ちゅどんです。 世界をコンピューターの中のように見せるのは、 黒い月がPSのディスクに見えるのと同じで、ダミートラップです。
> 第5トラップが解除されたり、ヨーコへのイレギュラーが分かったり……どんどん事態は進んできてますね。
そうですね。今のところは。問題はマジックナンバー7でしょう。 |